愛人契約や賭け麻雀などの不法な契約が破られた場合、相手に請求できるか
それで、最低でも月に3回以上は会い、月々の契約料として、Aさんは月に10万円をB子さんに前払いするという約束が成立したという事なんです。
しかし、先月頃からB子さんが何かと会うのを拒むようになってきて、B子さんを問い詰めたところ「他に好きな人が出来て、結婚を考えているので別れたい」と言ってきたそうなんです。
Aさんは「それなら別れてはあげるけれども、会えなかった先月と今月の契約料の合計20万円は返してくれ」と言いました。
しかしB子さんは「あのお金は返さない」と言ってきました。
Aさんは前払いしたお金を取り返すことは出来ないのでしょうか?
今回のケースは、AさんとB子さんとの契約が法律上認められるものかどうか、つまり不法なものだったかどうかがポイントになります。
民法708条の条項では、不法な原因の為に給付をした者は、給付したものの返還を請求できないという規定があり、これを「不法原因給付」と言います。
つまり今回のケースで言うと、AさんとB子さんの約束が不法なものだった場合は、AさんはB子さんにお金を返せという事は言えないという事になります。
自ら結んだ不法な契約に基づいて給付をした後で、その返還の請求に関して裁判所に救済を求めるという事は、裁判所は認めないということです。
これは法のことわざ・法の格言で「クリーンハンズの原則」という事を言い、「汚い手の人は法律上保護しません」という事です。
この不法原因給付には、賭け麻雀や賭けゴルフ、闇金融なども該当します。
「不法原因給付」の要件は、3つほどあります。
1つは給付が不法であった事。
この不法というのは、判例では「公序良俗違反」(公の秩序・善良な風俗に反する)法律行為、契約をした場合には、その契約は無効という事です。
2つ目はその給付をした事。
給付というのは、相手方に終局的な利益を与えるという事です。
3つ目は、その不法な原因が受益者(今回のケースではお金を貰った方)のみに存するものではない事。
以上の3つの要件があります。
つまり貰った方に不法な原因がある場合、その人は保護しませんので、原則に戻ってお金を返しなさいという事になります。
また、「お金を貰った方(受益者)が9割悪く、給付した人は1割悪い」というお互いに不法な場合は、どちらを保護するかを比較衡量し、「より不法な人」は保護しないという事になります。
そうなると、今回のケースは、AさんがB子さんに支払った給付、B子さんとの愛人関係を維持継続する為の契約をしたという事ですから、これは公序良俗違反という事になり、民法708条に基づいて、AさんはB子さんに給付したお金の返還請求は出来ないという結論になります。
ただし、前もって「愛人関係を解除した場合、その月に既に貰っているお金は返す」という約束をしていた場合には、返還請求ができることになっています。
裁判所の判例では、お互いに悪い事だという事を判定して「やっぱりやめましょう」という事を合意して契約を解除し、その上で給付した物を返すという特約を交わした場合、その特約は有効となっています。
お互いに悪い事をしたという事で翻意したので、その特約は有効と認め、その有効な特約に基づいて返すべきということになります。
また、B子さんが「Aさんと最低でも月に少なくとも2回以上会う」という約束を破っているので、一見、債務不履行にはある様に受け取ることもできそうですが、そもそも債務不履行というのは、あくまで契約が成立してからの問題ですから、公序良俗違反の契約をしている場合、契約そのものが無効という扱いになります。
従って、契約が無効であれば契約自体が成立していませんので、その契約に基づいて債務を履行するしない以前の問題です。
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