トラブル解決ナビ

日常生活に潜んでいるトラブルを解決するための法律や事例を紹介しています。

駅前の放置自転車が引き起こした事故の責任は自治体や鉄道会社にある?

毎朝電車で通勤しているAさんの最寄の駅は自転車の違法駐輪が非常に多く、つい最近それが原因で大変なことになりました。
Aさんは前から来た人を避けようとして、違法駐輪している自転車に接触し、自転車もろとも将棋倒しとなり、額を8針ぬう怪我をしました。
怒りが収まらないAさんは、自転車の防犯登録番号から自転車の持ち主を調べ損害賠償を求める考えです。
また、違法駐輪を放置している鉄道会社や地方自治体にも責任があると考え、損害賠償させようとしています。
駅前の放置自転車が引き起こした事故の責任は自治体や鉄道会社にある?

損害賠償ということですが、これは不法行為に基づく損害賠償の案件で、不法行為に基づく損害賠償の一般的な要件は4つほどあります。
1つ目は、過失責任の原則。自分の故意または過失による行為に基づくこと。
2つ目は、その行為によって他人の権利・ないしは利益を、違法に侵害したということ。
3つ目は、その違法な行為により、損害が生じた場合。
4つ目が、その加害者に責任能力があること。
以上の4つが、不法行為の成立条件ということになっています。

今回の場合にそれを当てはめてみますと、かなり難しい点があります。
まず相手方を特定できるかどうかで、自転車の持ち主については、防犯登録番号から調べようと考えているみたいですが、そもそも防犯登録番号からそういう持ち主、あるいは使用者を調査できるかどうかが1つ問題になります。

防犯の登録番号がわかれば、最寄の警察署に行って調査してもらうということになりますが、確かに相手方を特定するのはちょっと難しい可能性があります。

他には、先程の要件の中の因果関係の問題で、ある行為によって損害が生じた場合、原因と結果に因果関係があったかどうかで、確かに違法駐輪によってAさんがけがをしたのかという点です。
この因果関係というのを、証明しないといけなく、これは訴えようとする人に全部の立証責任があり、ここではAさんということになります。

また、自転車の持ち主がわかって損害賠償を請求をすることが認められるかどうかは裁判所の判断になり、鉄道会社や地方自治体にも責任があるとして損害賠償を請求しようと思っているということですが、そもそも鉄道会社や地方自治体が違法駐輪を放置していたかどうかが問題になります。
一般的には自治体などの活動で、「違法駐輪してはいけない」という看板を立てるとか、何ヶ月かに一回違法駐輪の撤去したりしています。
そういうことをしているのであれば、鉄道会社や地方自治体が違法駐輪を放置していたというのは、認められない可能性があります。
また、止まってその人が通り過ぎるまで待つとかしなかったAさんの方にも多少の過失があると思います。

気持ちが治まらないということであれば、そういう訴えを提起してもかまわないと思いますけども、過失相殺ということで、全額認められるのはちょっと難しいのかなと思います。

 - 生活のトラブル , ,

  関連記事

愛人契約や賭け麻雀などの不法な契約が破られた場合、相手に請求できるか

Aさんは結婚しているのにもかかわらず、B子さんに惚れ込んでしまい「ずっと一緒にいて欲しい、必要なお金は払うから」と提案してみたところ、B子さんは了承し、男女の関係を持ちました。 それで、最低でも月に3回以上は会い、月々の契約料として、Aさん …

飲み会の中止を予約していた店に伝え忘れたら損害賠償が必要?

Aさんは友達10人が参加する飲み会の幹事を任され、居酒屋に予約を入れました。 ところが当日、飲み会に参加するはずだった10人のうち8人が急に来られなくなってしまいました。 Aさんは仕方なくその日の飲み会の中止を決定しました。

又貸ししたものを返せないときは誰が弁償する?

会社員のA子さんは、知人から有名ブランドのネックレスを借りてパーティーに出席しました。 パーティーの数日後、今度はA子さんの家に友人のB子さんが遊びに来て、B子さんが、一日だけそのネックレスを貸してと言います。

壊れたエアコンは大家に修繕する義務がある?

Aさんは、アパートを借りて住んでいました。 最近、入居したときからついていたエアコンが壊れてしまいました。

未成年者が年齢を偽って交わした契約を後から取り消すことができるか?

18歳のA君はインターネットで知り合った人から個人売買で中古のパソコンを購入しました。 引渡しの際に相手から年齢を聞かれたので、A君は自分とそっくりな兄の免許証を見せ「21歳である」と偽りました。 安心した相手に、A君は代金の半額を支払い、 …

酒の席で酔っ払っている人に殴られたり、暴力を振るわれたりしたら

居酒屋でお酒を飲んでいたAさんは、偶然隣に座った見知らぬ男性と野球の話で盛り上がりました。 始めは楽しく飲んで話をしていたAさんと男性でしたが、お酒が入るにつれてお互いに遠慮がなくなり、徐々にムードが悪くなってきました。

旅館側のミスで宿泊の予約が取れなかった場合、その損害賠償は請求できるか?

夏休みに人気の温泉旅館に出かけようと考えたAさんは、インターネットで旅館のホームページを見ていると、偶然空き部屋がある日にちを発見しました。 ホームページに「メールを送っていただいた後、旅館側から予約確認の電話をおかけします」と書かれていた …

福袋の中身が気に入らない場合、返品できる?

毎年、主婦のAさんは正月になると福袋を買うことを楽しみにしています。 昨日もバーゲンセールで、衣類が詰め込まれた3万円の福袋を発見し、購入するかどうか迷っていると、お店の店員がやってきて、着まわししやすい色の服が入っていて、サイズも大きめの …

別れたら付き合っているときにもらったプレゼントは返さなければいけない?

3年間付き合った彼と別れることを決めたA子さんが彼に別れ話を切り出したところ、「これまでプレゼントしたものをすべて返して欲しい」と言われました。 そこでA子さんは服やアクセサリなどを返しましたが、その後彼から連絡があり「やっぱり品物はいらな …

離婚したとき養育費の支払いの約束は口約束だけでなく公正証書でしよう

7年前に結婚したA子さんは、夫との間に小学1年生の女の子がいます。 しかし夫とは喧嘩が絶えず、A子さんは離婚したいと考えるようになりました。 一方で夫は離婚の申し出を拒否し、A子さんと再度話し合った結果、しばらく別居して冷却期間をもうけるこ …