連帯債務と分割債務の違いについて
ある日良い物件が見つかったので、早速3人は銀行から3人の連帯でローンを組んで買い取り資金の1200万円を調達し、その物件を買い取りました。
店は開店しましたが、残念ながら経営が思わしくなく、しばらくして店を閉める事になってしまいました。
問題は銀行から3人の連帯で借りた一軒家の買い取り資金で、まだローンが半分以上も残っています。
他の2人は店を閉めた途端に連絡が取れなくなってしまい、銀行からは「Aさんに残り全額払ってもらう」と言われました。
そもそも3人で3分の1ずつ借金をしましたが、この借金をAさんは1人で返済しなければいけないのでしょうか?
債務者が数名いる場合は「分割債務(可分債務)」が原則となり、例外として「連帯債務」があります。
例えば、別荘をAさん・Bさん・Cさんで900万円で購入し、売主からその別荘の引渡しは終わりましたが、まだ代金は支払われていないという事例に基づいて説明すると、「分割債務」の場合は、売主がAさん・Bさん・Cさんに対して各々300万円ずつ請求ができるという形になります。
従って、Aさんは売主に対して300万円を支払えば足り、BさんもCさんも同じ事で、これが「分割債務」という事になります。
ところが「連帯債務」の場合は、A・B・Cという複数の債務者が、各自売主に対して全額のば900万の支払いを負担しているという事になります。
逆に言えば、売主からすれば、Aさん・Bさん・Cさんに対して全額を請求できます。
従って売主としては、Aさんに対してもBさんに対してもCさんに対しても900万全額の請求が出来ます。
ただし、各自に対して900万請求できますが、売主はあくまでも900万しか貰えませんので、それぞれ3人に対して900万だから計2700万貰えるという事ではありません。
一方債務者の方から見れば、Aさんが全額900万を売主に対して返済した場合、BさんとCさんは900万の債務を免れる事ができます。
今回のケースで「連帯債務」の場合は、売主が請求してくれば、1人が全額払わなければならないことになり、Aさんが全額負担した場合、BさんCさんは債務を免れることになり、今度はAさんがBさん・Cさんに対して「求償」できることになります。
Aさんが全額支払った事で債務を免れたので、BさんとCさんの負担部分が仮に平等だという事であれば、AさんはBさんとCさんに対して各300万円ずつ求償できるという結論になります。
この負担部分の割合というのは、当事者間の特約・合意で決まります。
その合意や特約が無いという事であれば、各債務者が「受けた利益の割合」に応じ、「受けた利益の割合」も同じであれば、最終的には平等になるという事になります。
連帯債務の成立は契約による場合と法律の規定による場合があります。
契約による場合には、連帯の合意をするという事で、法律の規定による場合には、例えば、日常家事の夫婦間の連帯債務のような規定もあります。
あるいは、共同で数人が不法行為をしたという場合のものもあります。
債権者にとってみれば一番お金のある人に対して全額請求できるので、通常は分割債務と連帯債務では連帯債務の方が多いです。
もし分割債務で、各々に対して300万ずつ請求できないとなれば、債権者はお金の無い人がいた場合に全額回収できなくなる可能性が出てきてしまいます。
売主の側からすると連帯債務の方がメリットがありますが、借りる方からすると連帯債務には慎重にならないといけないという事になります。
今回のケースをまとめると、1200万円の借り入れをしたんですが、その内のローンの半分の600万円がまだ残っているという事で、Aさんは連帯債務の契約をした以上は、銀行から「残り600万円を支払ってください」という請求に応じて、全額の600万円を支払わなければいけないという結論になります。
その後Aさんとしては、求償の問題が出てきて、他の2人と連絡が取れれば、2人に対して各自の負担部分の割合、例えば平等に3分の1ずつという事であれば、その2人に対して各200万ずつ請求をするという事になります。
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